どこへ向かう?劇場版クレヨンしんちゃん

「オタケベ!カスカベ野生王国」と
今後の劇場版クレヨンしんちゃんについて



INHALTSVERZEICHNIS

「オタケベ!カスカベ野生王国」の状況

興行収入の変遷

質とカネ

作風について

さて、今後はどうなりますかね






「オタケベ!カスカベ野生王国」の状況

2009年公開の映画「オタケベ!カスカベ野生王国」は、ネット上での評判はかなり良いようですね。なんでも、これまでしばらく駄作続きだったが、しぎのあきら監督によって本来のクレしんの面白さを取り戻したんだそうな。

しかし、ネット上でいくら褒められていても、じゃあ現実ではそれだけヒットしているのかというと、残念ながらそうとは言えないようです。以下が、30日間で稼いだ「カスカベ野生王国」の興行収入と、昨年の「金矛の勇者」の同じく30日間に亘る興行収入を比較したものです。


作品名 興行収入 観客動員数
カスカベ野生王国 9億6160万2610円 86万1447人
金矛の勇者 11億3794万9695円 100万1846人
(興行通信社発表)


いやはや、10億円に達していないわけです。これを書いている現在(6月6日)は既に6月ですから、今頃もう少し上乗せされているでしょうが、どうやら今年の最終的な成績は10億円台にとどまりそうです。つまり、歴代の劇しんと比較すると、「温泉わくわく」(9.5億円)は既に超えていますが、「ブタのヒヅメ」(10.5億円)や「ジャングル」(10.6億円)と同レベルになりそうですね。

ちなみに、去年の「金矛の勇者」の最終的な興行収入は12億3千万円でしたから、それを考慮に入れると、今年の最終的な興行収入は上記のそれからさらに1億円弱上乗せできそうな感じです。つまり9億6千万円か5千万円、ただし5月の下旬以降には劇場の数が昨年以上に激減していっているようですから、10億5千万円にも届かない可能性も十分ありますです。つまり、「カスカベ野生王国」の最終的な成績は、全17作品中、良くて14位、悪ければ16位となります。ちなみに、昨年の「金矛の勇者」は、当時の最新作としては全16作品中11位、一昨年の「ケツだけ爆弾」は全15作品中3位でした。




興行収入の変遷

ひでえ・・・。というのが上記の興行収入に対する私の第一印象です。一般的に、邦画は10億円を超えればとりあえずヒット作とみなされるそうです。「カスカベ野生王国」も最終的には10億円を超えそうなので、失敗作ではないでしょうが。

まあ、作品によって製作費や規模も全然違いますので、50億円超えなければヒットとみなされない作品もありますし、ミニシアター系の作品などでは10億円どころか5億円を超えなくてもよろしいというケースもありますからね。ですから、あまり単純に言えるものではないですが、クレしんの場合はまさに10億円がある種の目安となっているようです。

事実、「アニメーション監督 原恵一」(晶文社)という本の中に、原恵一監督のインタビューで、「温泉わくわく」があまりヒットしなかった(興行収入が10億円に満たなかった)事を悔やんでいたような発言をしていたと記憶しています。まあ、この作品はある意味ヒットは難しいと言える作品でしたからね。

なにしろ、「温泉わくわく」のパンフレットに載っている原監督のインタビューでは、そもそも温泉を作品のテーマにしたきっかけは原作者やプロデューサーと打ち合わせをした場所がたまたま健康ランドだったという事がきっかけだったそうで。劇中のセリフも「長嶋はそういう選手だった」とか、どういう選手なんだよと言いたくなるような、子供向けの作品にしては突っ込みどころ満載でしたし。もっとも、私は「温泉わくわく」も非常に好きな作品の一つですが。

そういった事が原因か、「温泉わくわく」は劇しんの中で唯一10億円を超えなかったという不名誉な記録を作ってしまったわけです。同作品のパンフレットで、ゲスト出演した故・丹波哲郎氏が「この作品はヒットするよ」と語ってくれたのに・・・。

そういった反省からか、次回作の「ジャングル」は相当子供向けを意識したものになっていますね。パンフレットでも原監督はしんちゃんに「今までしんちゃんが脇に回りがちだったのを気にしていた」というような発言をしていますし、また「クレヨンしんちゃん映画大全」(双葉社)の中のインタビューでも、「温泉わくわく」は自分の趣味に走りすぎたので反省して、「ジャングル」は子供向けを目指したと語っており、またその次回作の「オトナ帝国」でも子供向けを意識することを怠らず、当時演出だった水島努氏に子供が楽しめるシーン作りを任せたといった発言をしているなど、子供向けであるという視点をかなり意識するようになった感じです。

そういう意味でも、「温泉わくわく」は劇しんがどうあるべきかを製作スタッフに再考させたと思われる、ターニングポイントともなった作品とも言えそうです。余談ですが、私は「比較作品論」で、「オトナ帝国」は作風が「ジャングル」とよく似ているというのを書いたことがあります。今後、2007年までの劇しんの作品の興行収入が歴代作品の中で比較的好成績を保ち続けたのは、「ジャングル」と「オトナ帝国」で子供向けの作品作りの指針が確立され、それが原則として守られてきたというのも大きいような気がします。そういう意味では、原作者がクレしんの生みの親とするなら、原監督は本郷みつる監督に続く、劇しんのあるべき方向を示した第2の育ての親と言えそうです。

で、「戦国大合戦」で有終の美を飾った原監督の後を継いだ水島努監督は、「ヤキニクロード」(13億5千万円)と「カスカベボーイズ」(12億8千万円)で、興行収入は比較的安定しています。評判に関しても、原監督、というより「オトナ帝国」や「戦国大合戦」には及ばないものの、そこそこ良好だったと思います。「ヤキニクロード」は結構叩かれていたようでもありましたが。また、暴力シーンが露骨だという批判もありました(私もちょっと気になったシーンです)。

それで、2作で監督を降板した水島監督に続いてムトウユージ監督が就任しますが、この監督の作品から劇しんが一気に劣化してしまった、劇しんの最悪期だ、と言う人が(ネット上で)実に多いんですな。第1作の「3分ポッキリ」(13億円)は史上最低の駄作、「踊れアミーゴ」(13億8千万円)は前作よりは多少マシだがそれでもひどい作品。DVDのディスクを割りたくなったという意見さえあったと記憶しています。

こういった意見(中傷)にショックを受け、なおかつ腹が立った私は、今から2年前の2007年、「ムトウ監督を再評価せよ!」を書きました。そして、その2007年は劇しんの15周年記念で「ケツだけ爆弾」(15億5千万円)が公開されました。私は、まさにこの作品は15周年に相応しい、劇しん史上の最高傑作だと思い、考察もかなり気合いを入れて書きました(いや、考察はいつも気合い入れて書いてますよ)。

そして、さすがにこの作品はさすがに駄作扱いされないだろうと思っていたら、されていました。厳密には、ネット上の意見は賛否両論といった感じなんですが、とにかく駄作扱いする人たちは全く分かっていない、クレしんを一目見て教育に悪い、こんなもん駄目だと(お下品な描写など)表面上だけで「評価」する人たちと全く同じじゃないかというわけで、「ムトウ監督を再評価せよ!」の第2弾を書きました。辛辣な批判も添えてね。

さて、ムトウ監督が3作で降板した後、本郷監督が久々に復帰し、「金矛の勇者」が公開されました。この作品の制作が発表されると、「ムトウが降板した」事に大喜びするファンをよく見かけたものです。「ムトウはもう帰ってくるな」ってね。しかし、フタを開けてみると、12億3千万円・・・、ここ数年では最低の成績です。

前述したように、当時では16作品中11位と、あまり高くないですな。久々に本郷監督が復帰したものの、長年離れていたから、メインの観客層である子供たちの心を掴むのがうまくいかなかったのでしょうかね。ここからだと思います。原監督の「ジャングル」以降確立されてきたと思われる、子供向けとしての作品づくりの指針が崩れ始めたのは。そして今年の「カスカベ野生王国」、私はまた13億円台になるだろうと予測していました。しかし、この予想は外れ、それも悪い方へと外れてしまいました。そして、前述したように、歴代でもビリから2番目という可能性も出てきたわけです。

私はこの事にショックを受け、こちらの記事で昨年の「声なき声の者たちのための作品づくりを」のような文章は書きようがないという事を書きました。しかし、やはり書くことにしました。それが本文です。該当の記事を書いた当時は興行収入における私の予測が外れ、しかもその予測が悪い方向で外れたというダブルパンチだったので、かなりショックだったからです。しかし、今はショックも和らいで、なぜこういう結果なのかという事を冷静に考えるようになり、それに伴って心境も変化したわけです。

ここで、もう一度、興行収入をおさらいしてみると、「オトナ帝国」で一気に劇しんの興行収入はかなり回復し、それ以降は13億円前後と安定した数字を出し続けるようになりました。そして、2007年の「ケツだけ爆弾」で15億円を超すようになりました。しかし、翌年の「金矛の勇者」で12億3千万円と急落してしまいした。なお、公開時の2008年当時、邦画全体の興行収入が過去最高となっています。その事についての該当記事はこちらを、記事の魚拓はこちらをご参照してください。

こんなに良い状況下でありながら、「オトナ帝国」以来最低の成績って一体どういう事よ、と言いたくなるような結果でした。そして、「カスカベ野生王国」ではさらに下がり、なんと歴代の作品の中でもビリから2番目、良くても4番目という状態になりそうなのは、前述した通りです。

つまり、子供の観客がメインを占める劇しんにおいて、「カスカベ野生王国」は成功作とは言い難い、具体的に言うと子供を惹きつけることに成功したとは言い難い結果を残したという事です。10億円は超えそうなので、失敗作というわけでもないでしょうが(これも前述した通りです)。




質とカネ

さて、ここまで読まれてきて、そろそろ以下のようなご不満を持たれた方が多くなっていると思います。

「興行収入、興行収入っていうけど、興行収入だけが全てじゃないだろ。ヒットしなくたって、良い映画はたくさんあるだろうし。金だけが全てなのかよ」と。

そういう疑問を持たれるのは、まあ当然といえば当然ですね。それでは、興行収入で判断することについての是非をここで書いておきたいと思います。

私は、「興行収入=傑作」という図式は成り立たないと考えています。だってそうでしょう。いくらなんでも、「戦国大合戦」(興行収入13億円)が「ヤキニクロード」(興行収入13億5千万円)や「踊れアミーゴ」(興行収入13億8千万円)よりも格下かというと、そんな事はないでしょう。この辺りは主観的なものの見方となり客観的な見方ではないかもしれませんが、個々の主観による論理構築も可能ではありますので。まあ、この辺りの詳述は避けますが。

しかし、傑作と評される作品の多くは興行収入を多くたたき出しているケースが多く、あまりヒットしない作品というのは、やはり大した作品でないケースがしばしばであると思います。もちろん、あまりヒットしなかったけど傑作だという作品もあります。古い作品ですけど、たとえばチャールズ・チャップリンの「巴里の女性」(1923年公開)なんかがそうですよね。

この作品は、チャップリンはほとんど監督のみに専念して、当時大人気を博していた彼のコメディの作風は全く登場せず、一貫してシリアス路線です。で、当時の評論家から大絶賛され、今でも名作とされている作品です。しかし、全然ヒットしなかったんですね。なぜなら、当時の観客はチャップリンのコメディを求めていたからです。まさに、傑作でありながらヒットしなかった好例とも言える作品です。

一方で、チャップリンの最後の作品である「伯爵夫人」(1967年公開)は興行的に失敗しただけでなく、評論家からもあまり評価されなかった(されていない)のですね。現在、日本を代表するチャップリン評論家の大野裕之氏でさえ、「どうひいき目に見ても『伯爵夫人』は失敗作」と評しているくらいです。興行的に失敗し、なおかつ評価も低い作品はほとんどが駄作と評価せざると得ないのでしょうね。

もっとも、この2つの悪条件下で傑作と再評価されるケースもあります。チャップリン映画で唯一損失を出したという(…って、またチャップリンかよと言われそうですね。まあ、私はチャップリン好きなんでこの辺りは御堪忍を)「殺人狂時代」(1947年公開)がそうです。「1人殺せば犯罪者だが、100万人殺せば英雄」の台詞で有名な作品ですね。

それで、チャップリンを例に出してダラダラと書いてきましたが、私の言いたい事は要するに、興行収入と作品の質は必ずしも一致しないが、大体は一致する傾向にある。また、評論家などの評価もある程度考慮に入れる必要がある場合も存在する、ということですかね。つまり、「興行収入=傑作」は成り立たない一方で、「興行収入≒傑作」は成り立つということです。「=」ではなく「≒」です。興行収入が振るわなくても、評論家や観客からウケが良ければ、それは傑作の可能性もあり、評論家や観客からも叩かれれば傑作の可能性は皆無ではないものの極めて低いとも言えそうです。

さて、「カスカベ野生王国」は、評論家についてはよく分かりませんが、(ネット上限定での)観客からの評判はなかなか良いようですね。なんでも、今までの駄作とは大違いで、しぎの監督に期待できるとのことです。なるほど、ネット上しぎの監督は名監督で「カスカベ野生王国」は傑作と言えそうな感じですね。

しかし、実際の興行収入はどうかと言うと、前述したようにビリから2番目、良くて4番目というのが現実です。クレしんの劇場版は子供向けの作品です。ネット上の意見のほとんどは大人(もしくはある程度年齢のいった子供たち)でしょう。つまり、ネット上でいくら好評だといっても、本来の観客ではない人たちがいくら言っても、それが興行収入に反映されにくいと言えるわけです。そういうことから、傑作か否かは措くとしても本来の観客層を惹きつけるのはうまくいかなかったというわけです。




作風について

じゃあ、なんで子供たちをうまく惹きつけられなかったのか、原因は何なのか。「カスカベ野生王国」の内容を振り返っても、私にはどうもピンときませんでした。まあ同作品の内容と失念しかけているというとも理由ですが。そんな中、「クレヨンしんちゃん研究所」の掲示板や「クレヨンしんちゃん分析録」のコメントで、色々なご意見をいただきました。なぜ、この作品の興行収入が伸びなかったのか、そのご参考になると思いますので、以下に掲載します。



オタケベ! カスカベ野生王国を観て来ました。

正直、つまらなかったです。ネットでの好評が不思議な位に。
何だか、去年と真逆ですね。個人的に金矛は良作だったのですが、
ネットでは駄作と…。2年続けて、自分と世間の評価がまるで
逆なのは、何だか不気味…というか、自分の感性は一体どうなって
いるのだ、と思ってしまいます(汗
最も、金矛が良作という自分の価値観に、揺らぎは無いですが。

ただ、オタケベが自分にとって、つまらないであろう事は
ある程度予想していたので、まあ良いのですが、それより
気になった事は、周りの子供達が、ほとんど笑っていなかった事です。
それどころか、「どういう意味?」という子供の声さえ…。
どっと笑いが起こったのは、ひろしの丸焼きの所だけ、だった様な…。
ネットの評判を見て、今年は大人も子供も笑える作品だと
思っていたので、これは意外でした。付き添いのお母さん
ばかりが笑っていた印象が(笑
笑いがメインでなかった、金矛の勇者や、踊れ! アミーゴ!
でも、もう少し笑っていたような…。

どうも、『大人だけ』が見て『面白い』と判断して、
『大人だけ』が『面白い』と騒いでいるイメージですね…。
それとも、自分の観た回が、悪かったのでしょうか…。

(罪兎さんのご意見より)



私は結局、見に行きませんでした。
理由は、しぎの監督に期待していないから。です。
手堅い演出をされる方だなという印象が強く、期待以上の何かを得られる気がしないという…一種の不安ですね。
そういう理由から見に行けませんでした。

ネットでの評判は上々のようですが、それはある程度予期していました。予想通りというか…やはりこれ以上を期待できないなという思いがしました。

まだ観賞していないので、実際はどうかわかりませんが。

(くじら1さんのご意見より)



手堅い演出というのは、まさに「テンポの良さ」だと思うんですね。
「テンポの良さ」って一般的にも解釈しやすいですし、全体のバランスの指標にもなりやすい。
恐らく内容がどうこうよりもただテンポが良いだけで高評価になる傾向があるのではないかな、と。
(少なくともネット上のレビューは)

前回のムトウさんや、本郷さんがテンポで失敗しているとしたなら。
今回のしぎの監督はテンポ重視の手堅い演出をされるからその心配はないだろう、
つまり高評価になるだろうと私は予測していたんですね。

(くじら1さんのご意見より)



僕は、野生王国は王道すぎたんじゃないかと思います…。
ネットでも、「昔に戻った感じがイイ」みたいな意見を聞きますし、それはやっぱり大人の意見ですもんね。
そう考えると、ムトウ監督は現在の子供の感覚を掴んでいたって事かなと思ったりします。

(ダイダイさんのご意見より)



罪兎さん、くじら1さん、ダイダイさんのご意見から、ネット上で評判の良い作品と悪い作品はどのようなものか、およびどのような作品が子供たちの惹きつけるのか、以下のようにまとめられるかと思います。

テンポが良い、つまりストーリー展開はスムーズに行くものが、ネット上では評判が良いということになりそうです。くじら1さんのおっしゃるところの「手堅い演出」ですね。そして、そういう演出手法は初期の本郷みつる監督や原恵一監督が踏襲しており、だからこそ原監督までの劇しんは(個々の作品にもよりますが)ネット上で支持される傾向にあるようです。

逆に、(ネット上において)テンポが悪いとされる作品が水間努監督以降、特にムトウユージ監督においてそれが顕著となって、これが駄作とみなされる一つの根本的な原因だと言えそうです。しかし、これまで安定した興行収入を保ってきたのも水島、ムトウ両監督の功績でもあるわけです。ここから、今の子供を惹きつけるのにはテンポよりも重要な何かが必要とされるわけです。その何かというのは、ハッキリとはよく分かりませんが、主人公のしんちゃんにどう振舞ってもらうかとも関連があると思います。まあ、かなり強引なこじつけかもしれませんが、こちらでも引用した「ケツだけ爆弾」公開時のムトウ監督のインタビューを以下に掲載してみます。


しんちゃんがいきなりスーパーマンになっちゃうと、"しんちゃん"じゃなくなってしまうでしょ?(中略)ほとんどの場面では「ふつうの感覚で迫る」。そこが大事なんだよね。
(「クレヨンしんちゃん 漫画アクション5月11日増刊号」 (双葉社))


とまあ、このようにムトウ監督はクレしんに対する自身の哲学のようなものを持っていて、それが子供たちにも呼応したのではないかと思ったりします。まあ、それを明確に証明する術なと無かったりしますが。「カスカベ野生王国」でも、しんちゃんがいきなりスーパーマンになるような描写は無かったと思いますし。

クレしんのメインの観客層である子供たちを惹きつけるにはしんちゃんをどういう存在であるべきなのか。そこを軽視すべきではないと思いますね。まあ、「戦国大合戦」のように、しんちゃんがメインでないけれど傑作という例外的な作品も存在しますが。




さて、今後はどうなりますかね

それでですね、「カスカベ野生王国」の評判を見たところ、昔の作風に戻った事を喜ぶ人が結構いるようなんですね。昨年の「金矛の勇者」でも同じような事を言う人がいました。しかし、昔の作風に戻って喜ぶのは一体誰なんでしょうか。それは、昔ながらの「テンポ重視」を良しとするネット上の大人、つまりごく一部のファンくらいしかいないんじゃないですかね。インターネットというツールは、そのようなノイジーマイノリティの声がマジョリティのような錯覚を与えてしまうとも思えます。

クレしんの場合、最も重視すべきはサイレントマジョリティ、つまり声なき声の存在である子供たちです。大体、5年以上も経てばメインの観客層の世代も入れ替わっているはずです。新しい世代の子供たちが何を望んでいるのか、それを見極める必要があると思います。以前評判が良かった作風を今年取り入れても意味は無いです。なぜなら今と以前では観客が異なるからで、昔の観客が求めているものではなく、今の観客が求めているものを取り入れるべきなんですね。

ですから、私は比較作品論2でこんな作風がウケるんじゃないかという事を書きましたが、今思うとあまり意味がないのかもしれません。観客の嗜好は常に変化しているわけですから。そういう意味でも、水島監督やムトウ監督がネット上で反感を買うような作風でいたのは正解だったでしょうね。それではどうするべきか。それは、サイレントマイノリティが何を求めているかを知り、もしくは予測して、それに合わせた作品づくりをする事ですね。

もっとも、これでは作品の質よりも商売第一だと思われそうですし、確かにそうなんですよね。しかし、こういう姿勢こそが最も重要だと思うのです。だって、どんなに高い評価を得ても、興行収入が取れなかったら来年以降は無しね、という事になりますので。まずはメインの観客層が求めているものを意識した作品づくりをして、傑作といった評価ははその後からついてくれば良いと思います。公開された直後は悪評でも、後々に評価されるというケースだって出てくるでしょうし。前述しましたが、興行収入が第一というわけではないですが、この部分をしっかりと押さえておかないとどうしようもないわけです。

そういうわけで、(ネット上の)評価は良いけど興行収入はイマイチというしぎの監督は、次回も監督をされるのでしたら作風を変えていただかねばならないかなと思っています。メインの観客層が何を求めているかを見極めたうえで。それが無理であれば、残念ながら降板していただくしかないのではないと思います。

誤解のないように書いておきますと、私は個人的に「カスカベ野生王国」はなかなか面白いと思いました。歴代の劇しんの作品の中では、個人的に上位には来ないと思いますが、1作目でこのくらいの作品が作れるのなら、今後もしぎの監督が続いても構わないですし、今後も期待できると思ったりもします。しかし、私の個人的な嗜好を除くと、ちょっとそう言える状況ではないとも思うわけです。

ネットで「しぎの監督に期待」とか書いている人たち!

劇しんは「温泉わくわく」以来の氷河期を再び迎えようとしています。あなたたちの好みの作風による「傑作」が制作され続けたら、劇しんそのものの存続が危うくなるもしれません。

このまま「傑作」を生み出していって「有終の美」を飾るのか、あるいは「駄作」を生み出していって、今後も長寿作品として続行するのか。今、劇しんは岐路に立たされていると言えるのではないでしょうか。

第1作目の「アクション仮面vsハイグレ魔王」以来、全作品を劇場で観てきて、イギリスに留学している現在でさえ、一時帰国してでも劇場版を観るという私にしてみれば、今後も劇場版のしんちゃんは続いていってほしいと思っておりますです。



「オタケベ!カスカベ野生王国」の興行収入および観客動員数に関する情報を提供して下さったMr.K氏に厚く御礼申し上げます。
(筆者)





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