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シンガポール編

Republik Singapura
Republic of Singapore
新加坡共和国
சிங்கப்பூர் குடியரசு


(シンガポール共和国)





テレビアニメ放映国リストによると、シンガポールでは2001年5月より『クレヨンしんちゃん』のテレビアニメが放映が開始されたそうですが、2011年4月に発行された『クレヨンしんちゃん大全』(双葉社)では既に放映が終了している旨が記されています。終了となった理由や時期は不明です。また同書によれば、原作や漫画版の書籍は現在も発行されており、マレー語と中国語(繁体字・マレーシア版)の単行本が発行されているとのことです。

ただし、管理人の私がシンガポールを訪れた経験から言いますと、原作や漫画版の書籍の発行状況は少し異なるものです。

シンガポールの公用語は、マレー語(マレーシア語)、英語、中国語、タミル語の4言語が定められています(シンガポールの言語状況についてはこちらのページが詳しいです)。前述の『クレヨンしんちゃん大全』によると、マレー語と中国語(繁体字)の単行本が売られているとのことですが、私が実際に見たのは英語版と中国語(繁体字)の単行本で、マレー語とタミル語のものは見かけませんでした。

私が訪れた書店は、オーチャードロードにある高島屋の中に入っている紀伊国屋のシンガポール本店(Singapore Main Store
)です。この書店では、主に英語と中国語と日本語の書籍や雑誌、DVDが販売されています。日本資本の書店であり、在留邦人も多く利用するという事情からか、日本語の書籍もかなり充実しています。

この書店で、英語版と中国語版の『クレしん』の原作や漫画版の書籍を購入することができます。ただし、中国語版は、先の『クレヨンしんちゃん大全』(双葉社)のあるマレーシア版ではありませんでした。簡体字ではなく繁体字であるのは事実ですが、台湾から輸入した単行本が売られていました(ちなみに、シンガポール国内で公的に使用される中国語は簡体字です)。

単行本の表紙には"UNSUITABLE FOR THE YOUNG"、つまり「子供向けではない(ので子供には見せないように)」と書かれた黄色のシールが貼られています。これは英語版でも同様で、どちらも原作者の臼井儀人氏が書かれた『クレしん』の単行本には全て「子供向けでない」という旨のシールが貼られていました。

ただし、『クレしん』関連の全ての書籍にこのシールが貼られていたわけではなく、書籍によっては貼られていないものもありました。なお、日本語版の書籍の出版社は全て双葉社です。

1S$は65円、1元は2.7円としていますが、実は管理人が購入しなかったもののシールが貼られていたか否かは覚えているものもあり、その書籍はシンガポールでの値段は思い出せないので値段を書いていません。


シールが貼られている書籍

蠟筆小新搞笑精華版~一切都從這裡開始篇』 9.80S$(637円)、140元(378円)
クレヨンしんちゃんベストセレクション 初期ギャグ傑作選 すべてはここからはじまった! 編』 (630円)

蠟筆小新精華版(26)我的每一天都活力滿點篇』 6.63S$(430.95円)、95元(256.5円)
新書版)クレヨンしんちゃん 晴れ、ときどきアッパレ!!オラは毎日お元気だゾ編』 (400円)

蠟筆小新電影完全漫畫版(2)~野生王國篇~』 9.80S$(637円)、95元(378円)
高田ミレイ氏による『映画クレヨンしんちゃん オタケベ!カスカベ野生王国』(560円)

蠟筆小新電影版~呼風喚雨 戰國大合戰篇~』 190元(513円)
オールカラークレヨンしんちゃんアニメ映画版(嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦)』 (500円)



シールが貼られていない書籍

蠟筆小新電影版(1)呼風喚雨 金矛之勇者篇 全』 9.80S$(637円)、95元(378円)
高田ミレイ氏による『映画クレヨンしんちゃん完全コミック ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者』(550円)

蠟筆小新電影版(2)呼風喚雨 大人帝國的反擊篇 全』190元(513円)
クレヨンしんちゃんアニメ映画版 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 オールカラー』 (500円)

蠟筆小新益智書(8)世界偉人故事20篇』 140元(378円)
クレヨンしんちゃんのまんが世界の偉人20』 (840円)


なぜ、シールが貼られているものと貼られていないものがあるのか、その理由は不明です。『オトナ帝国』や『金矛の勇者』は子供に見せても良いとする一方で、『戦国大合戦』と『カスカベ野生王国』は見せてはならないというのは、何が基準になっているのか、私には分かりません。検閲官(?)が、『戦国大合戦』や『カスカベ野生王国』にはどこかに子供にとって不適切な描写が存在すると判断したのかもしれません。

シンガポールの『クレしん』の書籍は、台湾版と値段を比べてみるとかなり高くなっていることが分かります。輸入品であるため輸送までのコストなどがかかっているのかもしれず、日本版とあまり変わらない値段です。シンガポールは自由貿易港であり、関税がかけられる物は限られており、書籍は関税がかけられていないはずなのですが。詳細はこちらのページを参照してください。

シンガポールの物価は東南アジアの中ではかなり高いとされていますが、個人的には日本より若干安いという印象を受けました。なお、シンガポールドルが米ドルと連動しているため、米ドルに対して円高に時期では、より物価が安く感じられるでしょう。

もっとも、私が訪れた書店は日本語書籍も多くある日本資本の書店(紀伊国屋)ということから、地元の人が訪れる一般的な書店とは多少事情が異なる可能性もあります。そもそも、私が見た限りではマレー語の書籍が見つからない書店でしか確認していないわけですから、マレー語の『クレしん』を見かけなくても、当然でしょう。マレー語の書籍も扱っている書店であれば売っていると思います。

シンガポールの公用語の一つであるタミル語についてですが、タミル語版の『クレしん』も見かけず、またタミル語で『クレしん』が出版、放映されているという話は聞いたことがありません。タミル語版の『クレしん』は存在しない可能性が非常に高いでしょう。



シンガポールの規制について:子供の閲覧規制≠報道の規制

シンガポールは他国に比べて規制の厳しい国で有名で、またお世辞にも民主主義国とは言い難い政治体制が築かれています。与党の人民行動党(PAP)による事実上の一党独裁体制が独立以来続いており、同国に対して批判的な言論活動を行ったジャーナリストを投獄したり、国外追放にすることも未だに行われています。

2011年にも、アラン・シャドレイク氏というイギリス人の作家がシンガポールの司法制度を批判する著書を出したとして、6週間の禁錮刑の判決が出されるという以下のニュースがありました。

http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011052701000551.html
>死刑制度批判の英作家収監へ シンガポール、上訴棄却

事実、「国境なき記者団」の報道の自由度のランキング(2010年度)を参照すると、シンガポールは178位中136位となっており、かなり低い評価を受けています(日本は11位)。そして、これだけ報道の規制が行われているから、『クレヨンしんちゃん』の単行本にも「子供向けでない」と知らせるシールが貼られているからと思われそうですが、子供が閲覧するものを規制するのと報道の自由を規制することは、別個に考えるべきです。

報道の規制が緩くなればなるほど、子供が閲覧できるものも増えていくとは限りません。逆に報道の規制が厳しいからといって、子供の閲覧できるものも限られていくわけではないです。

例えば、前述の報道の自由度のランキング(2010年度)によると、タイはシンガポールよりも低く153位にランクされていますが、『クレしん』の単行本は特に問題なく購入できます。私のバンコク滞在の経験から書くと、コンビニのセブンイレブンで平積みで売られており、高田ミレイ氏の『戦国大合戦』と『金矛の勇者』を購入した際も、「子供向けでない」とするシールや同様の警告文は確認できませんでした(ただし、「国境なき記者団」の報道の自由度ランキングの順位付けには個人的に疑問に思う部分もあります)。

『クレしん』に限らず、タイでは子供が閲覧できる作品の範囲はシンガポールよりも広く、日本と大きく変わらないというのが私の印象でした。国王や王族を批判することがなければ、タイでは娯楽作品に対する規制はかなり緩いようです。

一方、報道の自由度のランキング(2010年度)で一位を獲得している、世界で最も報道の自由が認められているとされるフィンランドでは、(『クレしん』ではないですが)日本の漫画に修正が施されているという例もあります。また、ランキングで20位のアメリカでは、町山智浩氏の『キャプテン・アメリカはなぜ死んだか』(太田出版)によると、『クレしん』は完全な大人向けの(つまり子供にはご法度の)アニメ番組として放映されているようです。

ちなみに、シンガポールもタイも『クレしん』の単行本に何らかの修正が行われている形跡は存在しません。「ぞうさん」もそのままで描かれています。テレビアニメに関しては不明ですが。

シンガポールは大人向けの作品に対する規制も厳しいですが、少なくとも『クレしん』の単行本には修正が加えられていないところを見ると、フィンランドやアメリカほど子供の性的な描写、そして子供の閲覧規制には厳しくはないと推論ができます。そして、政府批判や大人向けのポルノなどにはかなり厳しい規制が行われています。逆に、フィンランドやアメリカでは子供の性的な描写や子供の閲覧規制には非常厳しく、一方で政府批判や大人向けのポルノなどには寛容な面があると考えられます。

日本のように、報道の自由もあり、子供向けの作品に対する規制も緩い国は、特に先進国の中ではかなり珍しいかもしれません(だから日本の「HENTAI文化」なるものが批判されたりもするのでしょうが)。

2011年のシンガポール総選挙では、シンガポールの一党独裁体制が揺るぎかねない結果となりましたが、今後同国の民主化が進み、報道の自由が認められるようになっても、「子供向けでない」のシールがはがれるとは限りません。逆に今後も現状が維持されたとしても、シールがはがれる可能性も皆無ではないと思います。

なお、日本では東京都が子供の読む漫画をより明確に規制しようという条例が成立しましたが、このような条例が日本中に広まったとしても、日本の報道の自由度に対する国際的な評価に影響を与えることはないでしょう。



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