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概論





クレヨンしんちゃんは、ドイツ、そしてオーストリアでも「Crayon Shin-chan」として紹介されています(参照→http://www.aglance.org/pic1/ok001.html)。両国の首都ベルリンとウィーンに私は行ったことがあり、上記のページに載っている、ウィーンのベレヴェデーレ宮殿側の路面電車停留所にも行きましたが、既に別の広告に変わっていました。まあ、2年も前のものですから、当然といえば当然なのでしょうが。

ただし、DVDやCDは販売されているようです(参照→http://www.wunschliste.de/links.pl?s=5204)。

当サイトの雑談室に収録されているオーストリアという国でも触れたように、オーストリアの公用語はドイツと同じドイツ語で、ドイツとオーストリアで売られている単行本は、同じ出版社から発行されています。その社名はEGMONT MANGA&ANIME(エグモント 漫画&アニメ)という、ドイツにある出版社のようです。値段は8.50ユーロ(1ユーロ=約140円)です。MANGAという社名の表記から、この出版社は日本の漫画を専門に取り扱っているのかもしれません。

初版発行日は、年しか書かれていません。3巻のみ2002年、6,7,8巻は2003年です。やはり、クレヨンしんちゃんが欧州で紹介されたのは、アジアに比べれば、かなり遅れているようです。

内容ですが、訳はかなり忠実です。小宮悦子、岡本夏生、宮沢リエなど、有名人の名前もそのまま載せられており、3巻の宮沢首相とヨーダは兄弟、というところまで、そのまま訳されています。
更に驚くべきことに、本の綴じが日本版と同じなのです。

言うまでもなく、ドイツ語は英語と同じく横書きです。これに対し、日本語は基本的に縦書きです。横書きの言語の本と、縦書きの言語の本では、綴じる向きが違います。つまり、表紙から見て縦書きの場合、背表紙は右になり、横書きの場合は左になるのです。そのため、漫画の絵も左右に反転されます。

私が現在持っている海外の単行本は、中国語版、韓国語版、ドイツ語版、英語版の4種ですが、中国語版が日本と同じ縦書きで、後の3つは横書きです(意外かもしれませんが、韓国語も昔は縦書きだったのですが、現代では横書きが主流となっているのです。したがって、韓国語版も、英語版と同じく本の綴じが日本語版や中国語版と逆で、絵も左右に反転されています)。

しかし、横書きのドイツ語版の本の綴じが、縦書きの日本語版と同じなのです。つまり、それほど日本語版に忠実であることを心掛けているのでしょう(何たるドイツ人的生真面目さ!)。

ただ、現地の人々にとってみれば、このような綴じの本は不自然に感じることでしょう。そういう訳か、単行本の一番最後のページには、このような二つの文が載せられています。

Sutoppu!
Kokowa kono manga no owari dayo.
Hantaigawa kara yomihajimete ne!
Dewa omatase shimashita!
"Crayon shin-chan''no hajimari hajimari!
Manga Chiimu

Stopp!
Das ist der Schluss des Mangas.
Fangt bitte am anderen Ende an!
Und nun genug Vorrede,jetzt geht's los mit Crayon Shin-chan!
Euer Manga Team

読めばお分かりでしょうが、前者の文は、なんとローマ字表記された日本語なのです。文字も日本語に直すと、「ストップ!ここはこの漫画の終わりだよ。反対側から読みはじめてね。ではお待たせしました。「クレヨンしんちゃん」のはじまりはじまり! マンガチーム」となります。もう予想ができているかもしれませんが、後者の文は前者の日本語のドイツ語訳です。

訳はかなり忠実だと前述しましたが、現地の人々にとって、日本の文化や風俗などはあまり馴染みがあるとはいえないようです。そのため、ところどころに注釈が付けられています。

いくつか例を挙げますと、しんちゃんが宅配便を受け取る際に、ハンコではなくおもちゃのスタンプ(スタンプには熊の絵と「くまさん銀行」の字があります。ドイツ語版ではこの字は「やあ、くまさん!」となっています)を押したため、困った配達員はしんちゃんに、じゃあサインしてくれと言われる話が3巻にあります(この時しんちゃんはウンコの絵を描いてしまいます)。この話のコマの欄外に、「日本ではサインより、むしろ個人のハンコが一般的である」という注釈が付けられています。ドイツ、オーストリアではサインが一般的なのでしょうか?少なくとも、日本ほどのハンコ社会ではないようですが。

また、納豆、コタツ、のりに対しても、注釈がつけられています。それぞれ「大豆に火を通した粘り気のある食べ物(溶けたチーズのように糸を引く)」、「テーブルと掛け布団のついた、足元を暖めるもの」、「乾燥させた海藻物」となります。

ただ、何から何まで日本語に忠実に訳してあるかといえば、必ずしもそうではありません。例えば、しんちゃんが宇集院家のパトリシアをサブちゃんと呼び、サブちゃんカットにしてしまう話が8巻に収録されていますが、この「サブちゃん」の部分は、ドイツ語だと「ランボー」と訳されています。あの映画の「ランボー」のことなのでしょう。北島三郎は、向こうではあまり馴染みが無いようです。

また、6巻にしんちゃんが犬神家の一族ごっこをやる場面が登場しますが、「犬神家の一族ごっこ」の吹きだしのところが、ドイツ語版では、「Ich spile Klippenspringer!」となっています。これは、「岩礁の飛び込み選手ごっこ」とでも訳せるのでしょうか。いずれにせよ、犬神家の一族とはなんら関係もありません。横溝正史の作品は、ドイツやオーストリアでは紹介されていないのでしょうかね。

また、6巻の中にしんちゃんとひろしのやりとりで、「オラのビンはするどいんだぞ」、「カン(勘)だろ」というセリフがあります。ここは、ドイツ語では、ビンは「プロスティトゥツィオーン(Prostitution=売春)」、カン(勘)は「イントゥイツィオーン(Intuition=直感)」と訳されています。さすがに、ビンと勘を直訳したらわけがわからなくなるでしょう(ドイツ語でビンはフラッシェ(Flasche)、カン(勘)はシュピューアズィン(Spürsinn)、カン(缶)の方はビュクセ(Büchse))。

さらに、「春日部」という表記は、ドイツ語版ではなぜか「Kasugabe」となっています。つまり「かすがべ」と発音してしまうのですが、なぜこのように表記されているかは不明です(英語版では「KASUKABE 」)。また、8巻には、本郷寺みづるというキャラクターが登場しますが、ドイツ語版の表記では「Mitsuru Hongo」、つまり、元ネタである当時のクレヨンしんちゃんの監督と同じ名前なのです(英語版では「MIZURU HONGOJI」)。さらに、カンタムロボは、ドイツ語版では「ガンダムロボ」となっています(英語版では「カンタムロボ」)。パロディーというものが、向こうの人にはわからないというはずはないと思うのですがね・・・。

さて、6巻と8巻には「ハイグレ魔王」、「ブリブリ王国」がそれぞれ収録されています。
まず、「ハイグレ魔王」ですが、ドイツ語版のタイトルは「ACTION MASK VS STRUMPFERATOR」です。訳すと「アクション仮面VSストッキング星人」となります。なぜ、ハイレグ(ハイグレ)ではなく、こう訳してあるかは不明です。ですから、ハイグレ魔王もストッキング大王(魔王)となっています。ちなみにハラマキレディースはビキニ精鋭部隊(リーダーはナンバー1と呼ばれている)、Tバック男爵はタンガ将軍(タンガはビキニのパンツのこと)、パンスト団は単に異星人となっています。

さらにおかしなことに、北春日部博士は「Professor Kabe Kitakasu」、つまり、「きたかす」が苗字で「かべ」を名前と解釈しているのです。なぜこうなっているかの理由も不明です。東大宮先生は「Dr.Higashiomiya」と訳してあるのに。なお、ミミ子が使っていたアクションとりもちガンは「アクションビーム」となっています。さすがに「とりもち」は直訳不可能だったようです。それにしても・・・。

次に「ブリブリ王国」ですが、ドイツ語版のタイトルは「Der Schatz vom Oink-Oink-Königreich」となります。訳すと、「ブリブリ王国の秘宝」となり、日本語と同じです。ただしOink-Oinkですが、これは一応ブリブリと訳して良いでしょう。というのは、ケツだけ星人の「ブリブリ」の効果音のところが、ドイツ語版ではOinkとなっているからです。ただし、このOinkというのは、効果音としては実は少数であり、「ブリブリ」の効果音にはKLATSCH、TRAPPEL、WACKELなどが多く使われています。BURI BURIはなぜか使われていません。

なお、登場人物の名前は、ミスターハブ、アナコンダ、ルル、果ては小宮悦子まで、全て日本語版と同じです。ただし、「ニュースステーション」のところは、「アサヒニュース」となっていますが。また、アナコンダの願いを書いた紙には、「電波少年風に」という記述がありますが、ドイツ語版では削除されています。

ドイツ語版では、しんちゃんは自分の両親にはそれぞれ「父ちゃん」、「母ちゃん」と呼ぶところを「Vater(ファーター)」、「Mutter(ムッター)」と呼びます。これらは、それぞれ英語のファーザー、マザーに当たるドイツ語で、「お父さん」、「お母さん」と訳します。しかし、しんちゃんが普通に「お父さん」、「お母さん」と呼んでいるのは、なんだか不自然な気もします。ななこおねいさんが常にいるわけでもないのに・・・。



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