概論


※当ページで引用した中国語は、中国で使われている簡体字という漢字で、
現代の日本の漢字とは異なる部分があり、また日本には無い漢字もあります。
従って、管理人からのパソコンでは表記できない
漢字もあるため、そこは類似した字に変更してありますので、ご了承下さい。

当ページを初めて読まれる際は、中国語についてを読まれた方が、
よろしいかと思います。





クレヨンしんちゃんは中国においても大きな人気を博しています。管理人の個人的な経験ですが、中国人留学生の知り合いに、「ラービーシャオシン(クレヨンしんちゃんの中国名。詳細は後述)って知ってる?」と訊いたところ、その留学生はすぐにクレヨンしんちゃんだと答え、中国でもすごい人気があると語っていました。

以下の背景が白くなっている部分が、中国におけるクレヨンしんちゃんのタイトルです。発音(ピンイン表記)は「ラービーシャオシン(labixiaoxin)」となり、以下の文字表記は、中国(中華人民共和国)で使用されている簡体字というものです(中国語と文字については、中国語についてを参照)。

ラービーシャオシン(labixiaoxin)

さて、中国でも高い人気を博しているクレヨンしんちゃんですが、その人気さ故か、グッズ販売に関して大きな問題が発生しています。

2006年9月30日、出版元の双葉社がクレヨンしんちゃんのグッズが販売できないという判決が、中国で下されたという報道がなされました。以下がその記事の引用です。


中国でも人気の高い漫画「クレヨンしんちゃん」に関する商標を中国企業が登録したため、中国国内でキャラクターグッズの販売ができなくなったとして、出版元の双葉社(東京)が商標登録取り消しを求めて訴訟を起こしたが、北京市第1中級人民法院(地裁)が訴えを退ける判決を下していたことが30日分かった。著作権を管理している出版元が、中国ではしんちゃんグッズを販売できないという異例の事態になっている。
(時事通信)(太字は管理人注)


ただし、原告の双葉社によると、太字の部分は誤報であるそうです。実際は、「ラービーシャオシン」という商標が中国国内での第三者による登録は有効であるとした、行政の中国商標局の判断は間違っているという主張による訴訟であるそうです。

また、中国ではしんちゃんグッズを販売できないというのも、事実とは異なるそうです。中国でも出版元によるクレヨンしんちゃんのグッズは、2002年1月に単行本の正規版が発行されたのを始め、これまでに多くの関連グッズが販売されており、これからもグッズの販売予定はあるそうです。現在販売中のグッズと販売予定グッズは、ケータイストラップ、ケータイゲーム、ケータイ待ち受け画面、アパレル、ステイショナリー、単行本、アバタ、アクセサリー等だそうです。

さて、中国による判決はいかにも理不尽なものであるかのように見えますが、実はこのような判決の背景には、双葉社による落ち度も存在しているという意見も存在します。

馬場錬成・東京理科大学知財専門職大学院教授によれば、双葉社がクレヨンしんちゃんの商標登録を日本で行ったのは1994年、台湾では1995年でしたが、中国ではアニメや漫画が長らく紹介されていなかったためか、商標登録が行われていなかったのです。

そして、(台湾でテレビアニメ放映されたことで)中国で海賊版が出回るようになっても、双葉社はなおも中国では商標登録を行わず、その間に中国の企業がクレヨンしんちゃんの商標登録を行い、それが有効とされてしまったのです。

中国企業の商標権獲得後も、双葉社は何の手も打っていなかったようで、それが中国企業の商標登録は正当である印象を持たせてしまったと言えます。双葉社は自らの意志を示すために、早くから中国当局に繰り返し提訴すべきだったというわけです。

双葉社が中国での商標登録を行ったのは2003年でしたが、1997年には誠益眼鏡公司という中国の企業が既に商標登録を行っていました。そのためか、2004年4月に中国で販売開始された衣料品などの双葉社のグッズが、同年の6月に公式商品にも関わらず商標権侵害として、つまりコピー商品として店頭から撤去されるという事態が起きました。

そして2005年1月、双葉社は中国国家商標評審委員会に誠益眼鏡公司の商標登録の無効を申請したものの、同年12月に申請が却下されます。

これを不服とした双葉社は2006年3月、北京市第一中級人民法院に提訴しました。しかし,同年9月30日、控訴却下によって敗訴してしまったわけです。

以下がその判決理由です。


1 1993年の商標法では商標登録後無期限での異議申し立てが可能であったのに対し、2001年に改正された新商標法では登録後5年に限定される。双葉社が旧商標法が適用されると主張するも、裁判所の判断では新商標法が適用されるとし、97年から8年経過してからの異議申し立ては認められないとした。
2 誠益眼鏡公司が97年に商標登録をした際、中国では双葉社の商標登録がなされておらず、「クレヨンしんちゃん」の商標がどれだけ認知されていたか疑問であるという指摘。
3 双葉社の主張では、誠益眼鏡公司の商標登録が「悪意をもったもの」と証明できない。


つまり、今回の判決における双葉社の落ち度を一言で表わせば、「対応が遅すぎた」に尽きます。海賊版が出回った当初に、何らかの意思表示をしていれば、このような判決は下らなかったのかもしれないのです。

もちろん、だからといって、このような判決が正当性のあるものとは言いがたいです。
当然、双葉社は北京市高級人民法院(高裁)に控訴しています。

中国事情に詳しい作家の森田靖郎氏は、今回の判決に対し、「中国のコピー商品については国際批判も出ており、中国政府も近年は厳しくなっているが、こうした判決が下されるとは後退している感じだ」と批判的な態度を示しています。

さらに、森田氏は「かつては日本のメーカーも“中国版”の商品を一部認めていたが、それが現地の業者に『勝手に作ってもいいんだ』と拡大解釈され、無断で商標登録されるケースも起きてしまった。日本も偽物を作る工場を買い上げるなどの対応をとっているが、追いついていない」と述べており、「政府に厳しく取り締まってもらうしかない」とのことです。

今後も、中国における商標権の問題は大きな関心事となっていくことでしょう。



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